2-1

僕の両親は平凡な人間だった。誰かに自分の両親の人間性を説明しようとしても、それ以外の言葉が思い浮かばない。彼らが何を考えて何を感じて生きてきたのか僕は知らない。それを推察させるような手がかりは親としての彼らの姿からは得ることができない。

 

僕もまた平凡な人間として生きてきた。勉強が人よりもできるという小さなプライドを持ち合わせながら、いわゆるエリートとして定義づけられた幸せを手に入れる心算だった。特別な何かを成し遂げようと考えたことはなかった。進学校という環境はある意味無菌室のようなものだった。僕は多くのことを考える必要がなかったし、偏差値が僕という存在を全肯定してくれた。多少の閉塞感を抱えながらも、それを掘り下げることもなく勉強を続け、東京大学に入学した。