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その過程で僕の精神は限りなく荒廃した。僕はたった一人で世界に立ち向かっていた。僕だけが美しいものを見ている。僕にはそれを表現する使命がある。それができない人生に何の価値があるだろうか。その思いの強さとは反比例するように、思考の明晰さは失われ、ありとあらゆる強迫的な症状が現れた。鏡に映る目は完全に狂人のそれだった。平凡であることも非凡であることも許されないのなら生きる道はなかった。

 

両親の判断で僕は実家に連れ戻された。自分の部屋に足を踏み入れた途端に二度嘔吐いた。この狭い部屋で薬漬けになりながら一生を終えることを想像して恐ろしくなった。どこかに逃げ出したかった。しかしどこにも行く宛てはなかった。そんな場所はとうの昔に探し尽くしていた。

 

部屋でうわ言を口走っていると父が神経質そうな声で僕に話しかけてきた。「頼むから病院に行ってくれないか」その口調は強圧的だった。懇願ではなく命令だった。父は僕を恐れていた。僕は頷くしかなかった。外の世界との共通言語を失っていることを悟り、絶望した。狂気の世界は底なし沼だった。深く沈めば沈むほど、僕の声は誰にも届かなくなっていく。精神病院の格子付きの部屋に閉じ込められ、叫びながら扉を何度も何度も叩きつけるが、数人がかりで押さえつけられて拘束され、強い薬を飲まされて意識が混濁する。頭の中で繰り返した妄想が限りなく現実に近づいていた。