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2年前の夏、渋谷のセンター街で三重から一人で旅行に来ていた女の子をナンパした。欺瞞の中に紛れ込んだ真実という切り口で過去を振り返ったときに彼女のことを思い出したので、書いてみようと思う。

 

垢抜けていない小柄な女の子だった。旅行者とわかる紙袋を下げて、目的もなく歩いている様子だったので話しかけやすかった。一緒に晩御飯を食べて、カラオケでキスをした。僕がソファに腰掛けて、彼女が僕の上に跨っていた。部屋に誘うと、「期待してるようなことにはならないよ」と彼女は言った。たぶん僕は「ただもう少し一緒にいたいだけ」とか言っただろう。彼女は滞在しているホテルに戻る必要があったので、一度別れた。もし会いたいと思ったらラインをすると僕に約束して。数時間後に彼女から連絡が来たので最寄駅を伝えた。

 

僕は駅で彼女を待っていた。土砂降りだった。彼女は傘を持っていなかったので、自分の傘に彼女を入れて家に向かった。途中、風があまりにも強かったので傘が折れて使いものにならなくなった。僕と彼女は手を繋いで笑いながら暴風雨の中を走った。